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Jul 5, 2018

歌丸さん

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歌丸さんの記事を読み比べ、
落語の音源や笑点の映像も集中的に視聴する。
笑点は、この方の藝を語る上で、大切な要素だなぁ、と思う。笑点はテレビタレントとしての歌丸さん、高座や寄席が落語家の本領としての歌丸さん、という二分方では、見落とすものがあまりにも多い。

模範解答を真っ先に、自分から率先して出していくリーダーシップ、空気作り・場作りの名手。
その快活さを、司会に回ってからもいかんなく発揮し、司会&回答者が一体となった「歌丸調」を、番組全体のトーンに明快に示した、あの束ね力。
比べては故人に失礼だが、前任者の司会のころ、あの伸びやかな空気は番組からもっと薄れていた。問いを出す人・それに答える人、の役割分担の線引きが、なんとなくはびこっていた。その点歌丸さんは、三波伸介さん司会時代の、ハラハラドキドキのごったに感を、見事に甦らせたと、ぼくは思う。座布団の与え方取り上げ方にも、緩急強弱の妙がさえわたっていた。これなど、明らかに三波流の復活だ。「5枚取れバカ野郎!」の三波風小気味よさが、歌丸さんにもはっきりと、あった。口調こそ違う、もっとソフトだけど。横丁のご隠居が飄々と痛いところをついてくるような、変幻自在さがたまらなくよかった。

そういう明るくウイットにあふれた、温かい人間味が、おそらく、落語をなさるときの下支え、地藝にも、なってたんじゃないかなぁ。。。笑点のテレビ出演こそが、むしろ、咄家、落語家桂歌丸にとっての、最大の藝の滋養だった。。。そんな気さえします。落語ってつまるところ、話し手が聞き手に、いかにして「話の中身」という場所の空気を吸わせるか、にかかっているから。歌丸さんのそういう力は、笑点の仕事を通じて、地道に研ぎ澄まされていったんじゃないか、と思う。

長年本当に楽しませていただきました。ありがとうございました。