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Aug 18, 2019

高畑勲展

青空いっぱいに大きく2回こぐブランコの、一回めをこぎきったとき、飛んでいた小鳥の群れがびっくりして方々に散り散りになるが、そこからぎゅーんと元に戻っていくブランコを鳥たちは揃って追いかけ、反対側から再びこぎ始める間際に一羽のこらず、こいでいるその少女のおつむに停まる。こぎ始めたとたんにまた一斉にパッと飛び立ち、そして、速度を増してこいでいる少女の嬉しそうな笑顔が、何秒かアップになる。その勢いにまかせてブランコを離れて、飛び移った真っ白な雲に、洗い立てのシーツのベッドに飛び込むかのように、腹ばいで着地、、、

日本のテレビアニメ不朽の名作「アルプスの少女ハイジ」の、オープニング動画を、文字にしたら、こんな具合になる。

東京竹橋の近代美術館で開催中の、高畑勲さんの展覧会を、じっくりと楽しんできた。彼の珠玉の作品群のうちの、どれに思い入れが深いは、世代によりさまざまだろうが、ぼくは何といっても、カルピス劇場のハイジと、東映動画の「太陽の王子ホルスの大冒険」。この2作にとりわけ丹念な展示がほどこされていて、本当にうれしかった。ハイジのオープニングも繰り返し壁に映写されていて、懐かしさのあまり、ちょっと、涙ぐんでしまいました。

アイヌや北欧の神話・伝説をもとにした「ホルス」が、いかに熱い思いをこめて作られたアニメだったか、、、絵コンテやキャラクター設定のチャート表など、徹底した仕事ぶりに息を飲む、、、が、ここまで念入りに仕上げた作品が、興行的にはまるでふるわず、高畑はやがて製作会社(東映動画)を去る。

ハイジのテレビ放映は、ホルスの6年後。アルムに現地ロケまでして、世界観の構築を徹底した上で、製作~オンエアをむかえた。結果は、皆さんご承知のとおりだ。

江戸のかたきを長崎で。
臥薪嘗胆。
捲土重来。

そんな言葉が、展示を見ながら次々に思い浮かんだ。