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Sep 13, 2021

ピアノと仏壇

名古屋の実家に滞在するときは、母方の祖母・大きいママの眠る仏壇のある部屋で寝起きしている。ぼくが大学に入って上京した3日後に彼女が旅立ったのも、この部屋だった。1984年4月4日。

そして今、寝起きしているベッドのすぐ横には、父方の祖父宅(祖父が亡くなって以降、家業を継いだ父の、長年の職場でもあった)を手放したときに、形見・思い出の品として持ち出してきた、アップライトのピアノが置かれている。

祖父宅のリビングルームに長年置いてあったこのピアノ。小学校に入るまではぼくもこの祖父宅に、両親共々暮らしていたが、物心ついたときにはもうあった。その頃はまだ自分は、ピアノは習っていなかったので、子供のときにこれを弾いた思い出は、ほとんどない。でも、木目の色合いや微妙に黄ばんだ鍵盤、踏むとずしんと重い真鍮のペダルなどなど、どこをとっても「the年期」という佇まいが、ぼくはずっと好きだった。

祖父宅を手放した、という知らせを両親から受けたときも、あのピアノはどうなったかな、と真っ先に気になった。それが今も健在で、しかもすぐ枕元にあり、滞在しているときは毎日弾けて親しめているのは、本当に嬉しい。

母が大きいママを看取った部屋の、大きいママがそのとき寝ていたベッドとまったく同じ位置に彼女の仏壇があり、その仏壇を眺めながらぼくが今寝起きしているベッドの横には、祖父の形見のピアノがある。いつしか五十半ばを過ぎた孫が、いまだにこうして、2人の思い出に日々支えられ、見守られて、生きている。