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Oct 17, 2021

伊勢音頭

東京の国立劇場で「伊勢音頭」という歌舞伎がかかっている。眼目の「油屋」の場面は、伊勢神宮の内宮と外宮をつなぐ参詣道の、ちょうど中間地点にあった遊興街・古市(ふるいち)の廓が、モデルになっている。麻吉(あさきち)という屋号の、古風なたたずまいの宿が、いまも営業を続けていて、ぼくも前に泊まったことがある。

●麻吉

古市は「間の山・あいのやま」と呼ばれる高台に位置しているから、麻吉の二階座敷からの眺めも開けている。往時はこの大広間で、地元の遊妓たちが、夜ごと輪になって、芝居の題名にもなった「伊勢音頭」を、はんなりと踊った。それを廓の客たちはめでながら、その晩の相手を「品定め」した。そういうなまめかしい用途のための踊りであり、歌なのである。

歌舞伎舞踊の大曲「鏡獅子」の序盤でも、川崎音頭の名で、この音頭は引用されている。川崎は航路で伊勢詣りに訪れる場合に船着き場となった街の名である。「鏡獅子」は、江戸城につとめている若い女性が、正月の余興の踊りを将軍さまに披露している、という設定の曲だから、つまり川崎音頭のくだりは、伊勢参宮にかこつけてじっさいは門前町ので廓遊びを楽しんでいる世間の人たちのさまを、若い娘が踊りにのせて、将軍さまにお見せしている・伝えている、という趣向なのだ。

●参考ユーチューブ