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Feb 7, 2022

見巧者

1976年、インスブルックでの冬のオリンピックでの、スキージャンプ競技。日本人選手が、平凡な飛距離で着地したが、何人かの観衆が、ぱちぱちぱち、と鮮やかなリアクションの拍手をした。

テレビ中継の実況アナが「さすがはスキーの本場、オーストリアの観客です。飛距離は平凡でも、飛型や着地姿勢の美しいジャンプには、惜しみない拍手が即座に送られています」と、すかさずフォローのことばを添えた。

画面には、飛行を終えたその選手が、ふるわぬ表情で掲示板の自分の順位を確かめる姿が、映し出されている。

実況アナの温かい、思いやりのあることばは、彼のその姿に、ささやかながらも可憐な花を添えていた。このアナウンサーにも、このとき拍手をした観客にも言えることだが、何かの美しさや素敵さに、自分の物差しで、尺度で、生き生きとリズムやテンポよく反応できるひと。それが本当の「通」「見巧者」「鑑賞上手」だと思う。

そしてこういう観客が、歌舞伎にもいま、大切なんだと思う。