okken.jp
Mar 21, 2022

戦火

避難所になっていたウクライナの劇場が、空爆されてしまった。日本の歌舞伎座もかつて、空襲で焼け落ちた悲しい歴史を持つ。

前の歌舞伎座のさよなら公演、いまの歌舞伎座のこけら落としで、亡き2代目中村吉右衛門さんが全身全霊で演じられた「熊谷陣屋」。あの珠玉の反戦劇を見ていて、劇場が戦争の犠牲になることが、二度とこの世で起こらないように、と心から願ったけど、また悲劇は繰り返された。人間世界の浅ましさを痛感する。

吉右衛門の「熊谷陣屋」といえば、戦後再建された歌舞伎座で、初代吉右衛門が生涯最後に演じたのも、この芝居だ。初代~二代と受け継がれた「吉右衛門の熊谷」は、いうなれば、日本の伝統演劇文化・舞台芸術が、世界に灯し続けるにふさわしい「反戦、平和の一灯」だ、とぼくは信じている。あの舞台姿を、あのセリフの一声一声を、大切に思い浮かべながら、かの地の戦いの終結を切に願う。