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Jan 27, 2020

思案の外(ほか)

人気芸能人の不貞問題で世間が騒がしい。つまり、外野・第三者が騒がしい。
亭主の長期不在中に、酔った弾みもあってあやまちをおかしてしまう、武家の妻の芝居は、昨年暮れの京都の顔見世でも久しぶりに情報された、近松門左衛門の作品。彼の時代にも、こういうトピックスへの関心が高かった、という証だろう。

芝居では、男と女のそういう事情全般を、「思案の外」という一言で、簡潔に言い表す。いいも悪いも問わないし問われない。理屈でいえば許されることではない。が、思案の外で、起きてしまった、起こってしまった、という事実は、消しようがない。いくら問いただしてもせんないこと。まして、当事者でもない他人に、ベラシャラ何を言う資格があるというのか。そんな厳しさも、しでかしてしまった者への優しさも、スパッとストレートにこめられた「思案の外」という言い方。

ぼくの、大好きな日本語の、一つです。