okken.jp
Nov 22, 2017

仁左衛門さんの勘平

今月の歌舞伎座の、忠臣蔵の五&六段目。
ずぶ濡れの着物から美しいあさぎ色の紋服に着替える勘平の、着替えの手伝いを、女房がするか姑がするかで、芝居の色合いやニュアンスがこうも変わるものか、、と改めて思った。着替えることの意味というか、その時の勘平の思いとか、さまざまな点で。

その仁左衛門さんの勘平は、かどかどの所作や型の美しさはことさらに強調させないんだけど、全体を通したしぐさの流れや、相手の芝居を黙って受けてるときの型が、綺麗で品格があること、この上ない。例えば、おかやがお軽の身を案じて「髪は切っても伸びるもの、、指など切って、、」と半泣きで語りかけてる声が、少し離れたところにいる勘平にもまた聞こえていて、聞くにつけますます我が身のつらさや不甲斐なさがこみあげていて、、、といった複雑な心境が、うつむいて座った全身にたちのぼっている。演じ手の内外が完全な勘平になってないと、ああいう充実感は出ないと思う。文章でたとえればつまり、行間をも存分に読ませて堪能させてくれる勘平。

この芝居、「刑事コロンボ」の元祖だなぁ。犯人を先に観客に明かしといて、観客の情報量に舞台の登場人物があとからだんだん追い付いてくる。作者はものすごくモダンな、実験的なことを、しているわけだ。

20171122