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Aug 22, 2022

渡辺文雄さん

歌舞伎の舞台写真家・渡辺文雄さんが旅立たれた。着物がバッチリ似合って三味線をたしなまれ、ふだんのファッションもダンディーなかたでした。撮影の合間に、歌舞伎座のロビーで、穏やかな笑みをたたえながら、いつも優しく接してくださいました。

でも、時々、あのジェントルな雰囲気とはまったく逆に、鋭い一言を発してらっしゃった。たとえばある公演のときも、「最高ですよね」と2人でその日の舞台の素晴らしさを分かちあったすぐあとに、ささやくように

「でもさぁ…本当に見とかなきゃいけない芝居ほど、お客が入らないよね、さみしいね」

真っ向勝負の古典歌舞伎が、その日の舞台でした

日々、客席の空気に溶け込みながらシャッターを切り続けているかたの、この一言は、重いなぁ、とそのときしみじみ感じました。

74歳…まだまだこれからも、もっともっと、撮影したかっただろうなぁ…。

渡辺さん、これからは空の上で、思う存分ファインダーをのぞいてくださいね。シャッター切りまくってくださいね。

渡辺さん、ありがとうございました。