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Jul 22, 2019

進化論と千本桜と

ダーウィンの「種の起源」を、子供向けの絵本にセンスよくまとめた本と、若い読者(ではないけどね、自分は。今や笑)のため、と銘打って原著を半分以下に要約した本とを買いました。

要約した本についていうと、たとえば、原著のなかの、のちに学説的に誤りが指摘されたくだりは、すべて割愛されています。原典至上主義をいさぎよく破棄して、容量自体をコンパクトにすることで、ダーウィンの進化論にすこしでも触れたことのある人の「すその」を広げるんだ、という趣旨が明快な本だなぁと、好感を覚えて買い求めました。

すこし前に「海老蔵づくし」という題でこのブログでもとりあげた、7月の歌舞伎座のよるの部の演目にも、これに通ずるコンセプトがあるなぁ、とあらためて思いました。「義経千本桜」という古典の歌舞伎の大作・名作を、海老蔵のワンマンショー的なエンタメ性を取り入れて、思い切りダイジエストにしたのが、今回の公演だと思うんです。

13役さまざまな登場人物の演じ分けはさすがにこたえたみたいで、途中何回かも公演休止が挟まってしまったのは残念ですが、古典の歌舞伎の大作に触れたことのある観客を、すこしでも増やそう、ファンの間口・すそのを広げようという目的は充分果たしているのではないか、と思います。今回の公演で初めて歌舞伎を見た、というお客様が、いつか、もとの作品の「義経千本桜」の公演にも来てくださったら、本当にうれしいことです。