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Aug 1, 2019

ディープインパクトと狐忠信

ディープインパクトの急死の原因である頸椎の損傷は、過剰な頻度の種付けの過労がたたったからだ、という見方が有力になってきたらしい。スポーツ報道を見比べ・読み比べても、現役時代、種牡馬時代の、いわゆる「戦績と稼ぎ額」だけにフォーカスが当たり、競争馬に動物・生き物としての存在感を感じとった記事の、あまりの少なさ乏しさに、なんとも複雑な、やりきれない気持ちがこみ上げてくる。

体格が小柄なわりにストライドが異常に大きな馬だった、ということだが、それを指摘するどの記事もが、乗り物のスペックを語るような筆致に終始している。車両や船舶の事故を報道するようなタッチなのだ。

サラブレッドという馬は、あの身体を支えるにはあまりにも細い脚一つとっても、速く走らせるという目的だけのために人間が作り出した「意図的な奇形」なわけで、そういう不遜さを、我々はやっぱり、こころのどこかに自覚しているべきだろう。芝居でいえば、「義経千本桜」の狐忠信は、森羅万象自然に対するヒトのこういう驕りへの、警鐘、頂門の一針にもなっている。

競争馬である以前に、一頭の馬、生き物なのだ。ディープインパクトは。そのことを大事に噛みしめたいと、切に思う。育てたり騎乗したりした当時者たちの悲しみの深さが、せめてもの救いです。冥福をつつしんでお祈りします。