okken.jp
Aug 10, 2020

長崎の原爆の日に

これを書いているきょうが、8月9日。終戦の直前、長崎に原爆が投下された日です。最近、毎週日曜のあさ10時から、フェイスブックでトーク動画の生放送をお届けしています。その週の新聞記事に歌舞伎の話題などもからめ、毎回思いつくままのトークをしているのですが、けさは、きょう9日の長崎、去る6日の広島、と2か所・2日にわたる原爆・被爆の歴史に思いをはせながらお話させていただきました。

いわゆる「語り部」の高齢化にともない、原爆の悲劇を、生きた言葉で後世に伝えていくことは、年々むつかしさを増しています。そして、いつかは、リアルタイムとしての原爆の悲劇、リアルタイムの原爆を知る声は、この世からは完全に消失する運命にあります。この世での一人一人の生・いのちに、歳月の限りがあるかぎり、避けられぬことです。

歌舞伎も、「構造」としては、これとまったく同じ運命を抱えていて、しかしそのことにも負けることなく、現代までバトンが受け継がれてきた芸能だと思います。歴史上の名優ひとりひとりの芝居を、声を、たたずまいや雰囲気を、リアルに知る人は、いつか必ず一人もいなくなる。でもそれに代わる次の世代の演じ手と、その芝居を楽しみ味わう観客が、ひとつになって歌舞伎のバトンを受け取り、また次の世代へと受けわたしていくわけです。

いまのコロナは、この受け取り・受け渡しに対して、きわめて困難な状況・ハードルを突き付けているわけです。ぼくの歌舞伎に関する活動も、さまざまな形において続け方や開催のしかたの見直し・再構築をせまられていますが、へこたれることなく、今の自分にできる最大限の形で、みなさまに芝居の楽しさを伝え、それを皆さまと共有し、これからの日々にも前向きに分け入っていこうと、思いを新たにしているところです。

どうかこれからも、よろしくご交誼のほど、お願い申し上げます。

季節柄、どうか皆さま、お身体に気をつけて、残る夏もお過ごしくださいませ。