気良歌舞伎

日本各地に根づくアマチュアの郷土芸能の歌舞伎、いわゆる地芝居も、ことしはコロナにたたられ、公演を見送ったところが大半だ。そんな中、映像配信による公演実施に活路を見出だした地域もある。

盆踊りの「徹夜踊り」でも有名な、岐阜県の郡上八幡。その明宝地区、気良(けら)の歌舞伎も、そんな一座だ。「白浪五人男」の熱演をあらかじめ撮影し、地元のケーブルテレビとユーチューブで、その映像を配信した。芝居小屋になったのは、廃校になった小学校の木造の講堂だ。自分たちの手仕事で見事なリノベーションが実現している。

配信が行われた９月19日、現地に、一座の皆さんを訪ねた。竹馬の友が働き盛りの青年になった今、仕事や日々の暮らしはさまざまだが、生まれ育った地域を歌舞伎で盛り上げたい、という共通の思いで再び集い、協力しあってことを成し遂げていく。まばゆいばかりのオーラが、お一人お一人から、まっすぐ放たれていた。訪ねてよかった、話を聞きに、話をしに足を運んで、本当によかった、と思いました。

配信を、ぼくも皆さんと一緒に、郡上の街中の古民家を活用したビストロで、地産の美味を楽しみながら見た。鮎のコンフィが格別だった。この地を流れる吉田川、長良川のせせらぎが育んだ、まさに故郷の食材だ。名古屋に生まれ、高山に店を構えた後、ここ郡上に移り改めて看板をあげた店主・シェフ。彼もまた、歌舞伎のチームと同じ世代の好青年だ。

彼のことは自分たちの仲間のように受けとめている、と歌舞伎チームの一人が言う。よその地から、この地域に魅せられて根をおろして勝負してくれている、その心意気が嬉しいんです、と。

地芝居が、いま、新しい時代を迎えている。新しい地芝居が生まれ始めている。

●ビストロ礼二郎
https://bistroreijiro.wixsite.com/bistro-reijiro

●気良歌舞伎
https://kerakabuki.jimdofree.com/

●気良歌舞伎のユーチューブ
https://youtu.be/9pF30XIH_cw