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Oct 26, 2020

相撲と歌舞伎と

あす千秋楽を迎える10月の歌舞伎座公演に、「角力場」という芝居がかかっている。がらりと異なる個性の力士ふたりが、互いの意地をかけて対峙し、にらみあい、一色触発の局面をむかえる。変化に富んだ楽しい芝居である。

角力、と書いて、すもう、と読む。辞書を引くと、角という字には「くらべる」という意味がある。つまり「力くらべ」であり、相撲という競技の、なるほど、これくらい本質をついた表記もないとおもう。相撲界を「角界」といまでも呼ぶのは、この角力という記し方の名残だ。

大横綱・双葉山が70連勝を阻まれて日本じゅうが大騒ぎになったとき、その波乱の一番のすぐ翌日に、当時の歌舞伎きっての名優・六代目尾上菊五郎から、激励の手紙が横綱のもとに届いている。いまだったらさしずめ、ウエブを使いこなす歌舞伎役者が、ブログやインスタで「大波乱の一番でした!」とか、「このショックに負けずに、双葉関には、あすからもまたがんばっていただきたいです」とか、応援かたがた発信するのかな。

ただし六代目と双葉山の場合は、本人から本人への、直筆・直接のメッセージであることに、大きな大きな価値がある。一流と一流が、そして、相撲と歌舞伎が、互いに切磋琢磨していた、、、そんな時代に、自分も居合わせてみたかったなぁという気もする。