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Nov 2, 2020

さらば 初代ボンド

ショーン・コネリーが亡くなった。享年90歳。りっぱな歳の重ねかたをなさった方だと思う。当たり役ジェームズ・ボンドの、あまりにも強固なイメージは、しばしば呪縛にもなったと察するが、見事にそれをねじ伏せ、広い額を堂々と見せ、ふければふけるほどに味も深みも増していった男性だった。

黒のタキシードがとにかく板についていて、あれほど自然に小粋に着こなせたら楽しいだろうなぁといつもうらやましかった。歌舞伎役者の黒紋付きの様になることと、彼のタキシードのあの風格とは、一脈通じていると思う。

歌舞伎の世界では、役や芸風を、受け渡していく・受け継いでいく、というコンセプトが、とても大切にされている。受け継ぎつつその役に、それを新しく担った役者も、自分なりの色合いや持ち味をおのずと加味していくし、時代に沿った変化も自然にそこには生まれる。映画の007シリーズもまさにこれで、初代ボンド役として、この役のイメージの基本設定・土台となる役柄を創出したのがショーン・コネリーだった。

二代目、三代目、、、代々脈々と受け継がれていくボンドとしての芸風、役柄の源泉、創始者として、その名は永く残っていくであろう。つつしんでご冥福をお祈りし、人生の幕切れを、敬意と拍手で見送らせていただきます。